ガチャガチャ爆売れ日記③ 謎の液体「ミステリーム」とカビの恐怖:在庫処分から始まったスライム事件簿

クレーム対応というのは、どんなビジネスにおいても気が重い仕事だ。ましてや、当時のユージンは社員わずか18名の少数精鋭。カスタマーサービスセンターなんて大層な組織があるはずもなく、「電話を取った人間がその場で即席のサービスセンターになる」という、文字通りの総力戦で毎日を乗り切っていた。現在のガチャガチャビジネスでも、小さなメーカーでは個人が直接クレームの電話を受ける状況が続いているのではないだろうか。

そんなユージンで、過去の教訓を全く活かせないまま、懲りずに起こってしまったのが「スライム事件・第二弾」である。

ガチャガチャ・ガチャポンラボ所長のオノーちゃん( @GachaOnoo )です。

謎の理科室

恐竜のかんづめ

■ 閃きと計算:「謎の理科室」誕生の裏側

事の発端は、大量に積み上がった「負の遺産」だった。当時、夏の恒例商品だった『こむしちゃんのかんずめ』の恐竜版として開発されたものの、全く売れずに残ってしまった小さな恐竜フィギュアたち。プラスチックの缶を開けると小さな恐竜が出てくるという仕様は、わたし達から見れば可愛かったが、子供たちの心には響かなかったのだ。

頭を抱える中で、いつもフルサポートしてくれていた外部の以心伝心な名物企画マンが、満面の笑みで私にこう告げた。

「オノーくん!大量に残った小さな恐竜たちをどうすればいいか閃いたよ〜!透明の容器に入れて、スライムと一緒に封入したら子供たち絶対に喜ぶと思うよ!」

この「思うよ!」という力強い一言から始まったのが、『謎の理科室 』(全5種:100円)である。

中身はスライムの専門メーカー製ではない代物だったが、透明プラケースの中で太古の恐竜たちが怪しげな液体に浸かっているという世界観は最高だった。名前をスライムから「ミステリーム」に変更「ミステリームによって保存されていた古代生物が、今長い眠りから目を覚ます!」という煽り文句も完璧。蓋を開ければ受注数量は15万個を突破し、「これで在庫の恐竜たちも一掃できる」と誰もが胸を撫で下ろした。

■ 暗転:緑の侵食と怒号の受話器

しかし、安堵の時間は長くは続かなかった。いよいよ全国のガチャガチャマシンに商品が行き渡った頃、ユージンの事務所に一本の電話が鳴り響く。

「カビが生えている」

受話器の向こうからの指摘に、背筋が凍りついた。クレームで送られてきた商品を確認すると、透明なケースの中で恐竜たちを優しく包んでいたはずの「ミステリーム」が、見るも無惨に変色し、禍々しいカビの温床へと変貌していたのだ。まさに別の意味での「ミステリー保存」であり、これこそ本当の「謎の理科室」であった。

ここからの社内は文字通りの大混乱に陥った。

「すぐに成分を調査しよう!」
「いや、お客様への保証はどうするんだ!?」
「製造元の内容証明書はどうなっている!?」

社内では連日、責任の所在や対応策を巡って喧嘩腰の激しい議論(ケンケンガクガク)が繰り広げられた。電話口では平謝りを続け、成分分析の手配に追われ、もはや誰が何を指示しているのかも分からない状態に陥っていた。

 

■ 嵐の去ったあとに

だが、この事件の結末は意外な形で訪れる。

社内が右往左往し、保証や回収の対応に頭を抱えているうちに、肝心の商品は市場から驚くべきスピードで消え去ってしまっていたのだ。 100円という手軽さと、怪しげなスライムという子供たちが大好物の要素が奇跡的に噛み合い、カビ問題が致命傷になる前に、全国のマシンから文字通り「売り切れ」になって無くなっていたのである。

文字通り「トホホ……」としか言いようのない結末だったが、¥100スライム商品に徹底的に縁がなかったユージンにとって、この「ミステリームカビ事件」は、今でも忘れられない苦くて奇妙な、まさに“謎だらけ”の思い出である。

次回は飛ばない「スカイマンUFO」 90万個の行方!?

んじゃまた!!!

 

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