ガチャガチャ爆売れ日記 100円玉の自販機から始まった、32年目のガチャガチャ狂騒曲 1
倉庫から消えた15万個の欲望と、大爆死の夏~スライム15万個蒸発事件~
「ガチャガチャの経済学」を発売した時にさらば青春の光の番組に出演させていただいた。
ガチャガチャは、「自分の財布の小銭で、回しても欲しいモノがででこない、人生そう上手くいかない
ということを初めて学ぶ装置なんです」と私は言いました。
「子どもが初めて覚える『理不尽』って、ガチャガチャかもしれないな」
さらば青春の光の森田氏が、ぽつりと言った。
まったくその通りだと思う。100円玉を握りしめ、お目当ての「当たり」を狙ってハンドルを回す。だが、出てくるのは欲しくもないハズレや、さっきも出たばかりのダブりだ。人生は思い通りにいかない。そんなほろ苦い社会の仕組みを、子どもたちはあの四角い自販機の前で身をもって学ぶ。
「子どもの悔しい気持ちによって飯を食っているわけですね」と相方の東ブクロ氏にもニヤニヤしながらツッコまれたが、あながち否定もできない。だが、因果応報というべきか。子どもたちに理不尽を教えてきた我々開発者もまた、それ以上の理不尽と恐怖を、日々このビジネスから突きつけられているのだ。
ガチャガチャ・ガチャポンラボ所長のオノーちゃん( @GachaOnoo )です。
「さらばのこの本ダレが書いとんねん!」

ふしぎな物体スライム
その最たるものが、今でも夢に見る「スライム大蒸発事件」である。
私がまだメーカーの若手開発者だった頃、玩具業界ではスライムが売れていた。あのドロドロとした、何とも言えない手触りの物体が、子どもたちはスライムは大好きだ。
「これは絶対にガチャガチャにすれば売れる。次の夏に向けて、ドカンとスライムを仕掛けるぞ!」
息巻いた私は、一挙に30万個という膨大な数のスライムカプセルを製造した。
最初の15万個は狙い通り飛ぶように売れた。手応えを感じた私は、残りの15万個を「次の夏の目玉」として、ひとまず会社の倉庫へと大切に収めた。これで来シーズンも勝てる。完璧なプロデュースのはずだった。
しかし、季節が巡り、いよいよ出荷の時期が近づいたある日のこと。倉庫の社長から妙な連絡が入った。
「もうそろそろスライムの入っている緑色の専用バケツ容器をカプセルに詰める時期だし、その連絡かなぁ~」と私は思ったのでした。
「あの、小野尾くん、カートン(段ボール箱)がめちゃくちゃ軽くなってるよ~……」 「えっ何が起こったのか?
社長倉庫に向かいます!!!」
嫌な予感がして、急いで倉庫へ走った。段ボールを開け、スライムの入っている緑色の専用バケツ容器を一つ手に取ってみる。軽い。あまりにも軽すぎるのだ。パカッとプラスチックのスライムが入っているであろうバケツ容器の蓋を開けた瞬間、私は文字通り凍りついた。
スライム入っているはずの専用バケツ容器の中は、スカスカの空っぽだった。
底の方に、緑色に干からびた得体の知れない薄い膜のようなものが、哀れにへばりついているだけ。
スライムの成分のほとんどは水分だ。日本のうだるような夏の倉庫の暑さに耐えかねて、スライム専用のバケツ容器のわずかな隙間から水分がすべて蒸発してしまったのだ。15万個の輝かしい売上予測は、文字通り「空気」となって消え去った。残されたのは、乾ききったゴミの山と、青ざめた私の顔だけ。一夏すら持たない商品の性質を計算に入れられなかった、若き日の私の完全な敗北だった。
だが、この手痛い大爆死を経験してもなお、この商売はやめられない。
なぜなら、ガチャガチャという箱には「普通のおもちゃ屋の棚に置いたら誰も見向きもしないようなものでも、カプセルに詰めてハンドルを回させると、なぜか爆発的に売れてしまう」という、悪魔的な魔力が宿っているからだ。
「何が出るかわからない理不尽」
どれだけ科学が進歩しても、ネットで何でも選んで買える時代になっても、人間は「何が出るかわからない理不尽」に100円玉を投じずにはいられない。
倉庫で消えた15万個のスライムの水分は、私がこの業界で一生をかけて追い続ける「欲望の正体」そのものだったのかもしれない。
LOハードマン氏のミディアムハピネスという言葉が若きオノーちゃんの脳みそを巡るのであった。
んじゃまた!!!
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